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BWA代表 おおくぼ剛
仕事と人物を知る、3つのエピソード

経歴や肩書きだけでは見えにくい、その人の仕事への向き合い方。これまでの話を聞く中で印象に残った、三つのエピソードから紹介します。

文/統括アドバイザー 安達
01

毎年、一年生。

ビジネスワークスアシスト(以下、BWA)代表のおおくぼ剛(ごう)さん。

実家は、新潟の大きな米農家。
子どもの頃は、家の農作業をするのが当たり前だったという。

けれど、最初から農業や日本酒の世界へ進んだわけではない。

大学卒業後、最初に勤めたのは商社だった。

その後、自ら憧れていた日本酒の世界へ入った。

入社後は研究室に所属し、酒造りに携わった。働きながら酒造学校で学び、首席で卒業。その後、一級酒造技能士となった。研究室には7年間所属した。

その当時にいたベテラン杜氏の言葉がある。

「何年やっても、一本目の仕込みは緊張する。
毎年一年生だ」

二十数年経った今も、よく覚えているという。

酒造学校を首席で卒業し、一級酒造技能士になった人が、今も覚えているのがこの言葉だった。

おおくぼさんの話を聞いていると、自分が何を成し遂げたかということより、誰から何を教わったかという話がよく出てくる。

その後、製造の現場を離れ、同じ会社の中で仕事の範囲を広げてきた。現在は社会保険労務士としても活動し、BWAの代表を務めている。

経験は増えた。
できることも、担う仕事も増えた。

それでも、経験が長いことを、そのまま答えにはしない。

分からなければ調べる。必要なら人に聞く。自分の経験だけで決めない。

「毎年、一年生。」

二十数年前に聞いたこの言葉が今も残っていることに、おおくぼさんの仕事への向き合い方が表れているように思う。

02

「本当にそうですか?」から始まった。

会社の中で、酒について一つの疑問が持ち上がったことがあったという。

それまで当たり前のように語られていたことは、本当に酒の味を変えるのか。

「本当にそうなのか。」

そこで、条件を変えた酒を実際に比較し、確かめることになった。

結果、味には違いがあった。

つまり、それまで語られてきたことには、実際に確かめられる違いがあったことになる。

けれど、この話で私が気になったのは、「昔から言われていたことが正しかった」という結論だけではない。

疑問が出たときに、経験や常識のどちらかをそのまま答えにせず、自分たちで確かめたことだった。

長く仕事をしていれば、「これまでそうしてきた」という経験が積み重なる。

その経験には意味がある。

けれど、おおくぼさんは、それだけを理由に答えを決めない。

疑問があれば、確かめる。
確かめたら、その結果を見る。

仕事の仕組みについて話を聞いていても、同じようなところがある。

会社の仕事の仕組みも、長い時間をかけて少しずつ見直してきたという。

何を導入したのか。
どんな仕組みに変えたのか。

最初は私も、そこを聞いていた。

けれど、話を聞いているうちに、それほど重要なのはそこではないように思えてきた。

おおくぼさんが気にしているのは、そこで働く人のことだった。

仕事が一部の人に偏っていないか。
同じような作業を何度もしていないか。
必要以上に負担がかかっていないか。
必要な情報を、必要な人が使える状態になっているか。

仕組みを変えることそのものが目的ではない。

そこで働く人が、無理なく仕事を続けられるか。

仕事の仕組みと、そこで働く人を
別々に見ていない。

社会保険労務士のほか、第一種衛生管理者、宅地建物取引士、ITパスポート。学生時代には危険物取扱者も取得している。

分野だけを見れば、ずいぶん違う。

けれど、資格そのものを前に出すことはほとんどない。

必要なことがあれば学ぶ。
疑問があれば確かめる。
仕組みに無理があれば見直す。

何を知っているかより、
目の前の仕事に何が必要なのか。

そして、その先にはいつも、そこで働く人がいる。

03

採択の、その先まで。

酒造会社の直売所をつくる事業について、おおくぼさんから話を聞いた。

構想が生まれたのは、補助金の募集を見つけてからではない。

今後の事業として必要になると考え、社内の各部署と調整しながら、すでに構想を練っていたという。

時期は、コロナ禍が終息へ向かおうとしていた頃。

抑えられていた観光需要が戻ることも見込んでいた。

同時に、地域には人を呼び込む施設が少ないという課題もあった。

自社にとって必要な事業であること。
訪れるお客様にとって意味のある場所になること。
そして、地域に人を呼び込む場所になること。

そこへ、事業再構築補助金という制度が重なった。

日頃から制度の情報を確認していたことで、適切なタイミングで申請することができた。

補助金があったから、
事業を考えたのではない。

先に、実現したい事業があった。
制度は、そのために使うものだった。

そして、採択されても終わらない。

直売所は実際に開業した。

後になって酒造会社の方から聞いたのだが、おおくぼさんは今も店頭に立つことがあるという。

試飲を希望する人には酒を説明し、見学に来た人がいれば案内する。

本人と話しているだけでは、私はそのことを知らなかった。

事業を構想した人が、
その後もお客様の前に立っている。

そこにいれば、計画書や数字だけでは分からないことが見えてくる。

どんなものに興味を持つのか。
何を尋ねるのか。
こちらが伝えたいことと、お客様が知りたいことは同じなのか。

おおくぼさんと仕事について話していると、視線が一か所にとどまらない。

そこで働く人。
訪れるお客様。
そして、その事業がある地域。

おおくぼさんは、ときどき「人に喜んでもらいたい」と話す。

最初は、ごく普通の言葉のようにも聞こえた。

けれど、これまでの仕事を一つずつ聞いていくと、その言葉の見え方が少し変わってくる。

仕組みをつくること。
制度を使うこと。
事業を立ち上げること。

そこで終わらない。

自分が関わったことで、そこにいる人や、その場所が、ちゃんと良くなっているか。

おおくぼさんが見ているのは、いつもその先なのだと思う。

少しだけ、持ってきました
ADACHI / NOTE

安達|あいだにあるもの

仕事から離れた話も。あわせてお楽しみください。

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